ミーツ・リージョナル06.07月号「試写室の外から言わせてもらえば」

こんにちは。
140B所属の青山ゆみこです。

140Bのブログが始まったので、
せっかくだし今までにいろんな媒体で掲載された記事を、
時間差でここにアップしていきたいと思います。


今日は、「ミーツ・リージョナル」で連載している、
映画コラム「試写室の外から言わせてもらえば」の06.07月号分です。

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 そろそろドンパチあるらしい。
 「アオヤマさんはなんや、三宮によう出たりするんかいな。しばらくは気ぃ付けた方がええで」
 限りなく見場は本職に近いけどグレーではない料理店主が言う。

 「そらぁ〜黙ってへんがな。わかるやろ、今度の6代目がホニャフニャ…(ヤバいので早送り)」

 神戸の元町あたりでは、こうした『週刊実話』な会話は、
大阪の「どうでっか」「ぼちぼちでんな」と同じぐらいに日常だ。
だって、「本家」を擁するその筋の、ご本家な街なんだもん。

 と思っているのは私だけではない証拠に、
あの一家の若頭の息子はオレの同級生で堅気だけどやっぱり喧嘩は強かったとか、
本家の近所の中高通ってたけど雨の日に傘貸してもろたけどよう返さんかった…とか、
男稼業の穏やかな日常風景が、
街のあちこちのカウンターやテーブルで冷や奴や焼酎のロックとともに味わい飲み干されていたりする。

 独断に重ねた独断だが、神戸の街人は、
大阪や京都…というか全国のどの街よりもその筋の事情に通じている、と自負している。
溝口敦で竹書房ハードコアパンクな本を読んで得た知識やその量自慢ではなくて、
感覚的にその「肌触りがわかる」。
つまり、組織図や事件簿ではわからない、生々しさや温度や湿度を体が知っている、という自負。
その根拠はただ神戸といえば本家、というだけなんだけど。

まあ、街の事情というものは、たいてい曖昧で感覚的な根拠でしか裏打ちされないものなのである。
 そんな独りよがりな自負をもった神戸人も広島人には弱い。
 「出身、広島ですわ」
 おぉ〜何だか値打ちがある。何だか、なんだけど。
 広島人×神戸人はフカサクな仁義なき話もするが、
それでは遠い理想を追いかけすぎるのか意外に盛り上がらない。
そんな時、二都の架け橋となるのが『岸和田少年愚連隊』の「カオルちゃん」だ。

 理不尽でクァ〜ッペェッ〜で15歳なのにオッサンで
「そんなヤツおらんやろ〜」
なリキ・タケウチの暴れようは、
中場利一原作で実在の人物がモデルだからなのかリアリティがない。
あまりに本物すぎるんだろう。

以前に、中場利一さんに尋ねた。

「どこまで本当でどんなのが嘘なんですか?」

 「アオヤマさんがね、これはホンマの話やなあ、と思ったのは嘘で、
これはありえへんやろ嘘やろ〜と思ったのは、ホンマの話ですわ」。

 ニヤリと笑う中場利一さんは、神戸でも広島でも愛されている。


岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説』

岸和田少年愚連隊』の番外編で、
竹内力演じるカオルちゃんが主役の宮坂武志監督シリーズ。
話はどれも下らないが、
だいたいが青春時代は下らないものの連続なのだ…というリアリティと理不尽な現実が満載。
エピソード1〜2あたりが酒場の話題度が高い。